研究プロジェクトの概要

研究プロジェクト

最終更新: 2020年8月1日

研究プロジェクト名:「東京大学における男女平等を考える、"Leaky pipeline"の分析とその抑制を目指して」

背景

 

東京大学は「東京大学ビジョン2020」[1]や「未来社会協創推進 (FSI)シンポジウム・シリーズ」[2]やにおいて「多様性の獲得」を目標として掲げており、その一環として、男女共同参画の推進に力を入れています。

2019年度現在、東京大学の構成員における女性の割合は、学部学生:18.6%、大学院生:30.2%、助教・講師:18%、准教授:11%、教授:7.6%となっています [3,4]。全体として女性率は少しずつ向上してはいますが、特に教員の女性率の向上が課題となっています。

 

国別の統計(図1)を参照すると、日本のアカデミアの女性率の低さは、日本の組織体系上の問題によるものではないかと推察されますが、東京大学は国内の他の大学・研究機関と比べてもさらに女性率が低く(図2)、現状には改善の余地が残されています。

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図1. Ratio of female teachers in tertiary education by country (source: OECD, 2020)

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図 2. Ratio of female full professors in major Japanese universities (source: webpage of each university, 2019)

先行研究では、コホート効果だけでは、東京大学における役職が上位になるのに従う女性研究者の減少率 (leaky pipeline)を説明できないことが示されています[5,6]。“Leaky pipeline” とは、キャリアパスを経ていくうちに段階的に女性の割合が減っていく現象を表した言葉ですが、私たちは、アカデミアにおいて研究者を志す女性の就職や昇進の障壁となっている要素(leaky pipelineを形成する構造)が存在しているという仮説を立て、これを東京大学において検証・分析する目的で、以下のような調査を行いました。

 

目的

本研究において、
①東京大学における女性の就職・昇進を阻んでいる要素を明らかとする 
②現在の状況を改善するための解決策を計画・実現させる

​の二点を、目的に設定しました。

手法

調査のためのプロジェクトチームを形成し、3段階に分けて調査を行いました。

 

Step 1: 日本および海外におけるアカデミアの「男女平等」についての文献調査

 

Step 2: インタビュー調査

本学の教員および博士課程の大学院生 (所属: 工学系、医学系、農学系、公共政策大学院)に対し、

インタビュー形式で聴き取り調査を合計8件行いました。

具体的には以下2つの質問

女性研究者のアカデミア就職・昇進を阻んでいる要素は何か? 
現在の状況を改善するためには何ができるか? 

を中心とした議論と、インタビュー回答者の個人的体験(子育て・介護等)と、

それに纏わって生じたキャリア上の葛藤・障害について聞き取りを行いました。

 

Step 3: 提言・議論

Step 2で明らかとなった問題点について解決策を考え、東京大学の理事と議論しました。
 

結果

Step2のインタビューを通して、東京大学におけるleaky pipelineの原因として以下の5つの主要因が

浮かび上がってきました。

 

1. 女性の割合がクリティカル・マス(30%)に達していない

注) クリティカル・マス:

普及が爆発的に跳ね上がる分岐点、もしくはその爆発的な普及に必要な普及率のこと

 

2. 男女ともに多様かつ適切なロールモデルが不足している(知られていない)

東京大学でロールモデルとして注目を集めている女性教員は、しばしば「スーパーロールモデル」である

 

3. 家事・育児・介護等の主な担い手が女性である
 
4. 非テニュア職員の任期の短さが、女性にとってより不利に働いている

若手の任期の短さや不安定さは男女共通の問題であるが、家庭や子供を持つことを希望する女性にとっては、

任期が短いため産休育休が満足に取れない(取れたとしても1-2ヶ月である)ことがより切実な問題となっている

 

5. 東京大学における既存の支援の場や機会を網羅的に把握できるプラットフォームとなる場がない(わかりづらい)
 

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東京大学理事、男女共同参画室のスタッフをはじめとする関係者にこの結果を提示し、議論をすることによって、以下の5つの提言を作成し、活動報告書と合わせて五神真総長に提出しました。

ー東京大学の構成員として現在の状況を改善するためにできること (提言) ー

 

1. 海外経験のある女性を教授として採用し、多様性の相乗効果を狙う

2. 非テニュアの教員に対して、取得可能な産休・育休の上限を延長する

3. 公式の会議を午後6時までに終了する

4. 学生や教員に、男女平等意識を育てるための講義を提供する

5. 東京大学における男女共同参画アクションを統合する目的で、"Toward Daiversity"のロゴの使用を検討する
 

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学会発表

本プロジェクトの研究成果を、2020年5月に開催された第10回アジア文化研究会 (The 10th Asian Conference on Cultural Studies: ACCS2020)にて発表しました (演題番号: 58058 "Understanding and Promoting Gender Diversity Among Senior Faculty at the University of Tokyo: A Student Action Project")。

​発表内容は、こちらにまとめられています。